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映画や読書をして、思ったことを書いていきます。

五輪の薔薇を読んだ

五輪の薔薇を読み終わった。

 もう4か月も前のことだが、古本屋さんに行った。そこではちょうど一冊百円フェアみたいのをやっていて、物色していたらとんでもなく分厚い本二冊セットを発見。表紙には少年と花と鍵と…みたいな感じでそそられるイラストがある。これは買うしかあるまいと思って購入したのが、この「五輪の薔薇」という本。

 購入した時はビニール包装されていて、中身は見ていなかったのだが、かえって中を見てみたらまあ文字の小さい事。長丁場を覚悟しました。

 作者はチャールズ・パリサーというアメリカ生まれでイギリス在住の大学教授。この本で作家デビューしたらしいけど、この「五輪の薔薇」を書くのに12年費やしたそうな。すごい。

ここからちょっとネタバレに入るかも。⤵




 内容としてはイギリスの19世紀後半、父親の素性が分からない少年が、遺産相続問題に巻き込まれる話。本の中に何時の時代とかが書かれていたわけではなかくて、「ソヴリン金貨がほんの数年前に使われ始めたばかり」という記述から推測した。
 訳者のあとがきにもあったんだけれど、ディケンズの、デービッド・コパーフィールドに本当によく似ている。特に最初の方。あ、でも下巻ではダウントンアビーみたいなシーンも出てきます。貴族とその召使のその生活を描くあたり。ジェーン・エアやオリバートゥイストにもよく似ているといわれているみたいだけど、これらの本はまだ読んでいないので、今後読むつもり。
 デービッド・コパーフィールドに似ているとは言ったけど、それよりもリアルで、あと過酷です。主人公が流されていく運命の中で、ありとあらゆるイギリス社会の裏側を総ざらいしている感じ。貧困地区、死体狩り、娼館、精神病院、貴族邸宅の下働きの生活…などなど。でも、読んでいて辛くならないのが不思議なところ。書き方が魅力的というか、その界隈で生きる人々の心情がいろいろな角度から描かれているので、読んでいてふと「あれ、なんか楽しそうかも…」とか思っちゃったりする。いや、勿論ものすごく辛い生活なのには間違いないのだけど。

 お話の本筋である、遺産相続問題の展開については…正直読み終わってもまだなにがなんだか分からない!父親探しから始まって、何故か少年の家系を五代くらい遡らないと、この問題は解決しなかったのですね。
 とにかく登場人物の多いこと、あと章が終わるごとに別展開のシーンに話が吹っ飛んで行ったりするので、途中で理解するのをあきらめてしまった。ははは。でも主人公の生活を追うだけで十二分に面白いです。あと、読むうちに、話の流れ的に謎が解けてくるので読み終わるころには、いつの間にかなんとなーく把握できるのでよしとした。

 他の魅力としては、当時のイギリスの地図がついてること。イギリスの地名に詳しいわけではないけれど、そういう洒落たおまけがついていると、なんだかワクワクする。後は、訳者のあとがきを読んで初めて気づいたのだけど、作者の意気込みというか、この話は「五輪の薔薇」だけあって、「5」にすごくこだわっている。なんと、


「全体は五部からなり、それぞれは五章に分かれ、すなわち五の二乗の二十五章となり、さらに各章は、五節ずつになっていて、作品全体は五の三乗の百二十五章から構成されている。」(甲斐萬里江,1998 p626)

そうな。

 途中で読むの中断したりして、結局読み終わるのに4か月くらいかかった。けど、読んで良かった。映画化とかは…しないだろうなあ。もししてくれたら是非見たいけれど。そして、日本人にこれを読むことを可能にしてくださった、訳者の甲斐萬里江さんに感謝。

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